あらすじ
巨大地震発生。地下に取り残された女性は、目が見えず、耳も聞こえない。
光も音も届かない絶対的迷宮。
生還不能まで6時間。
想像の限界を超えるどんでん返し。
救えるはずの事故で兄を亡くした青年・ハルオは、贖罪の気持ちから救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職する。業務の一環で訪れた、障がい者支援都市「WANOKUNI」で、巨大地震に遭遇。ほとんどの人間が避難する中、一人の女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。それは「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障がいを抱え、街のアイドル(象徴)して活動する中川博美だった――。
崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。およそ6時間後には安全地帯への経路も断たれてしまう。ハルオは一台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルターへ誘導するという前代未聞のミッションに挑む。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
何か読みたくて、本屋で平積みになっていたのでなんとなく手に取ったもの。
ドローンとか目も見えない耳も聞こえないとかその状態で脱出とか、よくそんな状況を作り出したもんだというのが第一の感想。
読んでいくうちに、女性への不信や動画配信者が出てくる不穏な空気など、作者さんの思惑にコロコロ転がされた。
最後、なんかもう読めてよかった。
綺麗なものに触れられた清涼感が胸に残った。
面白かったです!
Posted by ブクログ
3重障害のある要救助者をドローンて誘導して救助する話。地震による災害と障害者、コミュニケーションが取れないという状況の緊迫感や救助する側の限られた資源や時間、周囲からのプレッシャーなどの葛藤、幼い頃兄を救えなかった主人公の人を救おうとする善性で一気に読んでしまった。ラストは想定外。
Posted by ブクログ
いやぁーこれ、面白かった!
結末がとてもいい。好き。
でも地下って怖いよね。どんなに安全て言われても地下に住むのはなんか怖いって思ってしまう。やっぱり閉塞感かな。
短かったけど緊迫感が最後の最後まで続いた。私も途中ちょっときたないことを考えてしまっただけにこのラストは胸に来る。ドローンってこんな使い道もあったんだなと勉強にもなった。
Posted by ブクログ
すごかった。
本当に面白かった!
ぜひ、前情報を入れないで読んで欲しい作品。
井上真偽さん、前から気になっていたけど、ちょっと難解な感じなのかなと手が伸びずにいた。
こちらは話題作だったので読んでみたけど、井上真偽さんの作品だと直前まで知らず、意図せず初めましてだった。
終盤までハラハラドキドキの映画を観ているような展開。
亡くなったお兄さんの言葉にずっと囚われてきた主人公が、実は違う意図だったことに気付き、救われて良かった。
そしてラスト4ページで号泣。
このラスト、私には全く想像出来なかった。
この作品、読めて良かった。
Posted by ブクログ
ドローン一つでこれだけ面白いなんてすごい
閉塞的な環境で疑心暗鬼になりながらも次々と襲って来るスリリングな展開
びっくりするほど面白かった
とりあえずコバッキーは刑務所にぶち込んでもろて
Posted by ブクログ
オススメに出てきて何となく呼んでみた本でした。
普段あまり本を読まない私ですが続きが気になって少しずつ読んでいたら、気づけば終わっていました。タイトルからはどんな話か分からなかったですが読み進めていくとなるほどとなりました。
Posted by ブクログ
本人はある程度安全なところにいるんだしそんなにドキドキしないのではと思いつつ読み始めたら止まらず一気読みしました。メッセージ性もあるし主人公が過去と戦いながら話が進んでいくのもなんというかエモい。人物造形は一人一人をもっと掘っていくことも多分できるのだろうけど、災害サスペンスだし実際問題そんなに考えられないだろうとも思う。
まぁ映画的というか、サスペンス的な意味で展開が都合いいのはしょうがないですね。でも本当に楽しく読めました。
Posted by ブクログ
白杖の音は生存の証。
現代のヘレンケラー 見えない・聞こえない 障害を抱えた女性を災害瓦礫の中から救い出せるのか…使える手段はドローンのみ。どうやって救助者とコンタクトを取るのか、どのようにして誘導するのか。余震や浸水が心配される中、救助者が始まる。
今、私が面白い本を勧めるなら、この本。悲しみ、面白さ、ドキドキ、ハラハラ、疑惑、感動。全部入ってる。ロングセラー中のこの本ですが、面白い本には理由がある。ラストにグッときた!
Posted by ブクログ
えぇ.....うそ....読み終わったあとの余韻がすごい....
初めてけんごさんの言うどんでん返しを経験した。初めて2度見返してしまった。
プロローグのあれ、なんて言うのかな、1話1話の終わり方が天才すぎると思う。
一人一人の価値観?考えの違いでとても感動した。
最初は、ハラハラドキドキはもちろん、先輩との掛け合い?がとてもおもろかった。でも結末知りたすぎて早く読み終わりたいと思いながら読んでた。
終盤につれてハラハラドキドキ感が増していった。最後はもう......思ってもみなかった。1ミリも考えなかった。
まじのどんでん返しだったな。
早く誰かに教えたい!
Posted by ブクログ
どこで見かけて読もうと思ったのだったか。記憶にはないが、ようやく読むことができた。
ミステリーじゃないよな、なんの話だっけか、のような気軽な調子で。
話は軽めのSF、兄を事故で亡くした弟が主人公である。地下に広がる都市の物語でドローンが活躍する。タイトルの「アリアドネ」はドローンの名前だが、もしかして三重障害者、中川さんの話ではないか、声なき声のことではないか、と思わせるような結末だった。
地震大国日本で、災害時の復旧に不便なため地下都市は発展しない。そう聞いたことがある。だから電線も地中ではなく地上にあるのだと。
その裏を掻くような物語設定だが、きちんと筋道立ててその点も説明してあるので違和感はなく読み進めることができた。
Youtuberが出てくるところは「最近の話だな」という感じ。個人的には暴露系Youtuberに正義の鉄槌を、と思ってしまったが、これはライトノベルに毒されすぎかな笑
文章も読みやすく、2〜3時間くらいで読み終えられるくらいのもの。
何はともあれ、思うところは部分部分にあったものの、最後のシーンに全て持って行かれた。
穿った見方、考え方、捉え方をするものは多くあっても、堂々と清く正しく美しく生きる人間のなんと心打たれることか、ってなもんである。
なんとなく先が読めそうなものの
自分の人に対する見方に偏りがあることを痛感しました。○○な人はこういう人でこういうことが出来るけどこういうことは出来ない。そう言った捉え方は平時のときのごく一部なのかもしれない。誰かを守りたいと思ったとき、自分の力をフルで使って救い出したいと思ったときの人間の力というのは、容易に想像を超えてくるものですね。
一気に読んでしまいました
ハラハラドキドキで一気に読んでしまいました!
絶望と希望が目に浮かぶようで、すっと入ってくる文章の読みやすさなのにとても濃密でした。
そして最後の6pを繰り返し反芻して読み、大泣きしました。
人を救う事って、なんて難しくて、なんて尊いんだろう。
熱い展開
主人公の境遇や過去のトラウマを含めた感情などがとても表現されていて読んでいて泣きそうになることが多かったです。
最後の怒涛の展開がとても面白かったです!
Posted by ブクログ
ジオフロントのディザスター×救助用ドローン×盲ろうの要救助者という設定が面白いし、それゆえに熱いドラマを生み出していた。淡々と仕事をしているんですけど、実は熱い登場人物たち。特に我聞先輩はツンデレの代表選手みたい、ホント大好き。
「無理だと思ったら、そこが限界なんだよ」このセリフがこの小説の肝で、伝えたいことなんだと感じた。
後半の主人公が見る兄と自転車で釣りに行く夢に涙し、最終盤で発覚するとある謎に対する思わぬ真相に驚きました。これは面白い!
Posted by ブクログ
最後の数ページがなければ、現実はこんなにうまくはいかないだろうけど、映画映えしそうな話だな、で終わったところだったが、最後が全く想定していなかった展開で、主人公と同じくらい驚いた。どんでん返しとは違うものの、ここまで意表をつかれたのは久しぶりだったし、電車の中だったのに泣きそうになってしまった。
その後の話など、余計な部分もない、秀逸なラストだった。
Posted by ブクログ
どんでん返しと聞いていたので、読みながらも思いつく嫌な展開を想像していたけど、素敵な展開の方のどんでん返しがあるとは。私の心は汚れてる…
しかし韮沢にはずっとモヤモヤ。
よくもまあ「うざかった」とか言えるなあと思ってた上に、その相手に助けを求めるなんて、余程厚顔無恥じゃなくちゃ出来ない。
博美さんの障害を疑っておいて、その博美さんに妹を助けられたと知って、悔い改めて欲しい。
ドローンの知識がないながらも程よい説明ですらすら読めたし、逆に知識がないからこそ、もしかしたらファンタジーじみた部分にも気付かず読めた。
これは希望の話だった。
Posted by ブクログ
途中までは大して面白い本でもないなと思っていたが
最後の数ページで良い方に転んだ本だった
出来れば高木と韮沢の会話がもう少し在れば良かったのと
暴露系youtuber がその後どうなったのか知りたかった
Posted by ブクログ
「無理だと思ったらそこが限界」
捉え方は様々
5章の途中までは在り来りな内容というか、あまりワクワクしない展開が進んでいた印象
そして、感覚が研ぎ澄まされていたからなどという納得しがたい終わり方なのかと思ったら最後にどんでん返されて、なんでこうも毎回気付かないんだろう、と小説の面白さに改めて惹き込まれた。
心が綺麗な大人になりたいです。
Posted by ブクログ
ヒューマンドラマであり、ミステリーだ。伏線がうまくちりばめられている。
「無理だと思ったらそこが限界だ」
このことばはあまりに強くまぶしい。
そのことばに縛られている主人公がドローンの操縦によって、崩壊して封鎖された地下に閉じ込められた三重苦(見えない・聞こえない・話せない)の女性を助け出す話。
話の構成が上手で、毎回の章で新しい驚きを提供してくれる。最後の中川さんが泣くところでは心がギュッとした。
構成は以下の通り。
①三重苦の人を閉じ込められた地下から救出しなくてはいけない
②要救護者が水に落ち見失ってしまう
③目の見えないはずの中川さんが照明のスイッチをつける・見えているのでは?疑惑
④「無理だと思ったらそこが限界」ということばの本質を知る
⑤バックパックだと思っていたものの正体を知る
しいて言うならば暴露系Youtuberを立ち入り禁止区域に入れてしまう警備の弱さには疑問があるし、韮沢がいい大人なのに主人公に強く八つ当たりするのはどうなんだろう、と思ったりはしたが、全体的にまとまっていてよい作品だった。
Posted by ブクログ
ドローンを使って未来都市の災害現場へ救助に行くというあらすじを見て、(自分の好み的に)最後まで読むことができるのか不安要素もあったが、読み進めていくうちに、その不安は解消された。
もしかしたら3重苦という障害は盛っているのでは?という疑惑が出たところから一気に面白くなり、終盤でそれは障害により研ぎ澄まされた感覚が成せることだったと片付けられそうな時はえー?とがっくりきたが、最後、やってくれましたね。納得したエンディングで読み終わった時にすごくスッキリした。
映画化されそうだなー。
Posted by ブクログ
スマートシティ構想。健常者も障碍者も安心して暮らせる町としてスタートしたはずの「WANOKUNI」にて巨大地震が発生する。地下五階に取り残された一人の女性を救うべく奮闘する主人公たち救助チームだったが、彼女は盲聾唖の三つの障碍を持っていた。
少し救助が進む度に新たな困難が立ちはだかるというような感じで、まるでドラマやゲームのように読者も一緒にドキドキできる内容だった。途中で主人公たちを苛む疑惑に対し、毅然とした態度で救助にあたる者、やいのやいの言うだけのネット民の対比が面白かった。ただ、自分が外野の立場でこの状況を目にした時、このネット民のような反応をしないとは言い切れない。なぜなら、頁を捲りながら「全部嘘だったというオチでは?」と疑っていたから。真相を知った時、「ああ、なんてワタクシの心は汚れているんだろう」と真っ先に思った。変にミステリー慣れしている人ほど、作者の仕掛けた罠に嵌ってしまいそうな気がする。
Posted by ブクログ
サクサク読めたが、最後思いもよらない結末に。読み手のツボをついたところが面白い。
加えて、限界という言葉の意味も角度が違うと意味も変わるところもまた趣がある。
面白かった
よくまとまっていると思いました。
が、ちょっとコンパクト過ぎ?
地下都市もあんまり掘り下げがなく、ちっちゃな倉庫くらいのイメージしか持てませんでした。
あっと言う間に読了。
値段とページ数は比例すべき、と考えたら倍くらいのボリューム欲しかった。
とは言え、これ以上引き伸ばすネタはないだろうし、半分くらいの値段なら納得感あったかも。
でも面白かったです。
Posted by ブクログ
淡々とした簡潔な文章で読みやすかった。地震発生時の救助の物語だが、ほどよい緊迫感と少しの疑惑と主人公の気持ちの変化がうまく融合されていたと思う。ただ、個人的にはもっと心理描写やぐっとのめりこめる表現がある小説のほうが好み。とてもあっさりした印象を受けた。
安西先生がちらほら頭をよぎる、主人公(と兄)の信条?は、何が何でもやってやる!という根性論から、目的を達成するためには方向転換や気持ちの持ちようを変えながら、でもあきらめることはしないという水のような気持に変わっていくところはとても共感できた。
Posted by ブクログ
ミステリーが好きで、普段見ている小説紹介のYouTuberがおすすめしていたのをきっかけに、この本を読んでみた。実際に読んでみると文章がとても読みやすく、テンポも良かったので最後まで一気に楽しむことができた。
中でも特に印象に残っているのは、身体に障害を持つ二人の登場人物が、それぞれの弱さを補い合いながら協力して脱出を成功させた場面だ。二人の信頼関係や支え合う姿に胸を打たれたし、単なるサスペンスではなく人間ドラマとしての深さも感じられた。
一方で、物語の中でいくつか納得しきれない部分もあった。例えば、困難を乗り越える場面が少しご都合主義に感じられたり、主人公の過去の描写にもう少し説得力が欲しかったりした。また、韮沢姉が何度も妹を見失う展開には少し違和感を覚えた。
とはいえ、全体としては非常に面白く、ミステリーとしての完成度も高い作品だと思う。新鮮な設定と読みやすさが魅力で、ミステリー好きにはぜひ読んでほしい一冊だった。
Posted by ブクログ
技術の進歩はこんな話も作れるんだ、単純にドローンが引き出す可能性に感心した。
まだあまり身近に感じなかったけど興味を持てた。
障害をもつ方を救済する、どんなふうに助け出すんだろうとハラハラさせられて読み始めたけど、結局は色んな可能性が重なり実現できたと思える。
述べたドローンの進化、人間の潜在能力、団結力。
特に中川さんの感性というか能力はフィクションと言え実際にそういう方もいるのかと思わされた。少し出来過ぎかもと思えなくもないけど、そこは楽しめたから良し。
無理という言葉のテーマも改めて考える。諦める線を選ぶのも自分の意思。その限界を伸ばせるのも自分次第。最近よく似た考えに出会えていたので、ここは共感できたかな。
ただ脱出劇は思ったよりもあっさりした感じだったかな。もっとめんどくさいものを期待していたので。
Posted by ブクログ
このミス2024年5位。
ミステリーというよりタイムリミットサスペンスのような話。その割に緊迫感はあまり感じられず、面白くないわけではないが、軽い読み物的感じだった。
我聞や韮沢など登場人物も魅力がありそうなのにうまく絡んでいない感じがちょっと残念。
ラストも含め、映像化したら面白いのかなと思う。
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ドローンのベンチャー企業に勤める主人公。後悔している過去。仕事先で災害発生。
読み進めているときはアドベンチャーゲームをしている時のような印象。すこしドローン周りや建物の解説が過剰かなと感じた。図もついているのに、訳註が多すぎて目が滑る翻訳小説で話が入ってこないときと似た感覚。心理描写も然り。視点的に仕方ないのかもしれないが、切迫感があるはずなのに…?緊張感が少し物足りなくなってしまった。率直に申し上げると「もったいない」と感じてしまった。
最後まで読んで、なるほどともう一度戻った。その面白さと、のめり込みきれなかった残念さに、すこし複雑である。
Posted by ブクログ
地下のスマートシティ、ドローンを活用した災害救助というのは新鮮なテーマだった。ただ、特にドローンの活用是非を問うとかは無く、興味を引くためだけの要素と感じた。
作者のメッセージが強く出ていたのはこの二箇所。
「『人にはそれぞれ、限界があります。誰かには簡単でも自分には無理難題なこともあれば、その逆もしかり、です。だから私は、自分には〈無理だ〉と思ったら、すぐに潔く諦めます。諦めて、もっと自分に〈できそう〉なことを見つけて、そちらに目標を切り替えます』」
『無理っていうのは、信号なんだ。「これ以上やったら危険だ」っていう、脳や体のな。もちろん人間は機械じゃないから、その信号が本当に正しいかどうかはわからない。慎重になりすぎて失敗することもあれば、甘く見すぎて無謀なことをやっちまうこともある。けど大事なのは、その「無理かどうか」のラインを自分で引くことだ。お前の感覚で、お前の意志でラインを引くこと自体が、重要なんだ。だってそのラインは、お前以外の他人には絶対解らないことなんだから。だからあのとき、お前が「無理だ」と思って諦めたのは、それはそれで正しいんだよ。』
無理だと思わなければなんでもできる、では無く、無理だと思ったら素直に諦める。そして別の方法、できることを探す。そんな生き方もある。
Posted by ブクログ
★3.3
巨大地震で地下都市崩壊。
要救助者は、視覚・聴覚・発話に制限あり。
声なき声に、耳を澄ませ。
すべてはドローンに託された。
音のない世界で交わされるコミュニケーションは独特の緊張感と静けさがあり、その設定だけでも物語としての「強度」を感じた。
ただ、全体を通して感じたのは、“エンタメとして成立させたい”という欲のほうだった。展開には粗が見立ち、人物たちのの感情は浅く、終盤の“種明かし”も、輪郭をなぞるような”整理”にとどまっていた。
設定の妙は確かにある。けれども、その感性を物語に活かしきれていたかと問われると、首をかしげたくなる。
音を巡る物語のはずなのに、なぜか、響きが乏しい。
にもかかわらず、”すごいものを読んだ”と評価されているのだとしたら——
その熱狂のなかで、誰かの“声にならない声”が、今まさにかき消されているのかもしれない。
「人物を掘り下げる物語ではない」と言われれば、確かにそうなのだが。
とはいえ、「聞く」という行為をここまで前面に据えた構成はやはり新鮮で、その挑戦自体には、確かな可能性を感じる。
ただ不思議なことに、読み終えてからも耳に残る“余韻”はあった。
音ではなく、意志を、祈りを、拾おうとする感覚。
その静かなテーマは、物語の奥にずっと潜んでいたのだと、そう思いたい。
Posted by ブクログ
少年時代に兄を事故で失ったハルオは、災害救助用ドローンの開発技術者となった。障がい者支援都市「WANOKUNI」周辺で大地震が発生。水と炎が迫る地下層にただひとり残された人物をドローンで救出する作戦に参加することなったハルオ。しかし要救出者は、視覚・聴覚・発声にハンデを抱える人物だった…
ミッションインポッシブル的タイムリミット型サスペンス。見えない聞こえない話せないハンデのある人を、ドローンによる遠隔操作で救出するという設定は独創的かつ現代的。現代的といえば、ついに“暴露系YouTuber”がミステリに登場する時代になったかとしみじみ…
ただ、これだけ大規模の大地震が起きた際に、たった一人の救出のためにこんなに多くの人員を割けるのか?とか、なぜ取り残されたのが一人って特定できるの?とか、この施設以外の場所の被害はどうだったのか?とか、余計なことが気になってしまい、物語にあまり入り込めなかった。
要救出者の行動に関する“違和感”が本書の肝となる謎だが、それがドラマチックに氷解するラストはエモい。本格ミステリ読みとしては、“見取り図”で気づけなかったのが悔しいけど(苦笑)
本書が初読の井上真偽作品。気になる作家さんなので、他作品にも手を伸ばしていきたい。
週刊文春ミステリーベスト10 5位
このミステリーがすごい! 5位
本格ミステリ・ベスト10 30位
SRの会ミステリーベスト10 次点
ミステリが読みたい! 6位